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女記者モノ・・・

相互リンクしていただいた『絵ろ本問屋 かおす亭本舗』のエル・カオス様のイラストを拝見して、なんとなく冒頭だけ試し書きをしてみました。
失踪した親友を探す女記者・・・といった感じでしょうか。

こうして、中途半端に書き散らしては、なかなか形にならない今日この頃です(汗)。


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●女記者モノ

「ほ、本当ですかッ!?」
「……あぁ、確かだ」

 頷く俺の姿に、それまで強張っている目の前の美女の表情が、驚きに変わり、すぐに喜びへと変わっていった。
 スーツスカート姿の凛としたショートカットの美女、年は20代後半か、左手の薬指に光る指輪から人妻である可能性がある。
 受け取った名刺には、大手出版社の名が記されており、きびきびした動作からさぞかし出来る記者さんなのだろう。
 更に、武道をする者特有の隙のなさで、美しさの中にどこか冷たい雰囲気すら漂わせていた。だが、今は喜びの表情を浮かべている姿は、とても可愛らしく魅力的に映った。 

(……櫻坂 葵(さくらざか あおい)ねぇ)

 俺が名刺に記載された名前と渡された問題の人物のうつった写真を確認しつつ、その美貌を上目使いで値踏みする。それに気づいた女は、表情を改めると、再び心の鎧をまとい始めた。
 場末のバー、そのカウンター隅を占拠していた情報屋の俺の元に、この女が訪ねてきたのは深夜近かった。散々、俺を求めてこの界隈を探し回ったのだろう、僅かに疲れた様子が伺える。

「それで、彼女は……」
「おっと、ストップッ!!」
「……え?」

 無防備に話を続けようとする彼女を俺は制すると、カウンターの向こうにいるマスターに目配せする。すると、彼は黙って頷くと顎で奥を指し示した。

「黙って付いてきなッ」
「な、なにを……」

 まるでトイレにでも行くかのような素振りで俺はふらっと立ち上がり、店の奥へと進む。そのまま裏の勝手口から出て、狭い路地裏を速足で歩き出す。それに戸惑いを表情を浮かべながらも、女は俺の様子から黙って付いてきた。
 狭い路地を何度も曲がり、追跡者がいないを確認すると、俺はようやく歩みスピードを落とす。

「まったく、無防備にその名を口にするな。不用心すぎるぜアンタは」
「な、なにを言って……」
「アンタ、つけられてたぜ」
「……えッ?」

 今更、慌てて背後を振り返る女の様子に、俺は苦笑いを浮かべた。



 この女が口に出したのは、失踪した親友の名だという。
 テレビや週刊誌でも時々見かけていた有名な美人ライターで、ある日突然一家共々姿を消したと騒がれた。もちろん、有名人の失踪ともなれば警察も捜査に乗り出したのだが、この半年で目ぼしい進展がないのは俺の耳に入っていた。
 
(そんな状態に我慢ならず、自らの足でも調べようとは……ねぇ)

 その後、顔馴染みの店の従業員部屋でようやく一息つき、事の詳細を聞いた俺は、目の前の女の無鉄砲さに内心で呆れていた。
 その当人は、小さなテーブルを挟んで座り、俺が店員に頼んで作ってもらった気付けのピンク色の泡立つカクテルを口にしている。
 念の為に、あれから更に2人して街中を適当に歩き回った為、喉が渇いていたのだろう。グイグイといいペースでグラスの中身を飲み干した。

「これ……変わった味ねぇ」
「この店のオリジナルだが、口に合わねぇか?」
「……いいえ、ただ、歩き回ったからかアルコールのまわりが早いみたい。お水でも貰えるかしら?」

 女はほんのりと肌をピンク色に染めている。それを確認して俺は肩を竦めると、勝手知ったる冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出して差し出した。
 先の一件で、俺に対する警戒心が少しだけ薄れたのだろう。礼の言葉と共にそれを受け取ると、女は僅かに口元を綻ばせる。

「アンタ、見かけによらず無鉄砲だなぁ」
「やっぱり、彼女の事……知ってるのね?」
「あぁ、知ってる。彼女に情報提供してたのは俺だしな。だが、一度だけ忠告しておいてやる。このまま、そのドアから出て日常に戻りな。今だったらまだ間に合うぜッ」

 裏手のドアを指さす俺に、女は黙って見上げている。だた、その瞳に迷いの様子はなかった。

「ふぅ、やれやれ、アンタも彼女に負けず頑固だなぁ」
「『狙った特ダネには喰い付いて離れない!!』それが私と彼女の信条だったから、だから、私は何があってもこの件から降りないわッ」
 
 ボリボリと首の後ろを掻く俺に、女はキッパリと断言する。
 そのテコでも動かなさそうな様子に、かつての彼女を重ねて、俺はため息をついた。

「俺が彼女の依頼で連れて行った所までなら案内ができるが……それには条件が一つある」
「お金なら、ここに……」
「あ、あぁ。それは迷惑料として貰っておく。だが、正直、これから行く所は、やべぇ所だ。女のアンタを連れて行くには危険が多すぎる場所だ」

 俺の言葉の意味を、女は理解したのだろう。表情を強張らせ、グッと膝の上に置いていた拳を握りしめる。それでも、女はその意思を曲げることなく、ゆっくりと口を開く。

「……その条件とは、なんですか?」
「アンタを守るためにも、アンタには、俺のモノであるフリをしてもらいたい。その為には、俺のいう事には、なんでも従って見せる必要があるんだが……」
「貴方の……女のフリをしろと?」

 表情を険しくする女に対し、俺は首を振って応える。

「いいや、男に媚ふる雌奴隷だ。アンタの親友が最後に追っていたのは、麻薬と雌奴隷に堕とした女を売買するシンジゲートなんだよ」

 その俺の言葉に、目の前の女は目を見開くと、グッと唇を噛みしめ、押し黙った。

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