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ブレイベスト・イーター

 非現代モノの練習がてら、ちょっと実験で試し書きしてみました。
 「エロさ」というより「無残さ」とかがメインの味となりますでしょうか(汗)。
 
 とはいえ、触手モノとしてちゃんと書くなら、もう少しネットリと触手描写を盛るべきなんでしょうね(苦笑)。



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『ブレイベスト・イーター』

――カッ、カッ、カッ……

 大理石の廊下を駆け抜けてくる音が徐々に近づいてくる。

(ようやく……ここに来る……)

 かつて、この国の王が座っていた豪華な玉座に座っていた我は、ゆっくりと瞼を開く。
 それと同時に、正面の謁見の間へと入るの大きな両開きの扉が激しい音と共に開け放たれ、一人の剣士が姿を現した。
 純白であった白きマントや身に纏う白銀の鎧を返り血で朱で染めた姿で、ギッとこちらを睨み付けるのは、一人の女性であった。
 天窓から差し込む月明かりを浴びて煌びやかに光る金の長髪を靡かせ、まだ少女らしさの残る清楚で知的な印象を与える美貌を引き締め、透き通るような碧い瞳に強い決意の光を宿して毅然と立っている姿は、まるで絵画のようで見惚れてしまいそうであった。
 その女性が巷では『聖剣に認めらし聖なる力を持つ者』『天の使いの代行者』『覇魔の勇者』など、様々な名で民に呼ばれ、慕い敬われているのは既に知っていた。
 そして、その女性が我を倒しに来たであろうことも……。

「貴様が魔王かッ!!」

 手にしていた柄に紅玉の嵌った白銀の刃の聖剣を構え、そう叫ぶ。
 『魔王』、そう名乗った事など一度もないはずだが、いつからかそれが我を示す言葉として民の間で定着しているのは認識している。
 その詰問に答える代わりに、我の身がゆっくりと玉座から立ち上がる。
 それを戦闘の意思と捉えたのか、女勇者は素早く床を蹴ると、神速と呼べる速さで間合いを一瞬で詰め、手にした聖剣を切り上げてきた。

「成敗ッ!!」

 無駄のまったくない動きで、必殺の刃が私に迫る。
 それに対し我が身は反応を示さず、ただ素直にその刃を受け止めるだけだった。

――グニュッ

 我が身に纏っている漆黒のマント。いや、正確にはそう見えるソレは、食い込んできた白銀の刃を優しく受け止め包み込む。

「――なッ!?」

 聖剣を絡め取られ抜けなくなった事に動揺する女勇者。
 覇魔の力を持つといわれ、我が眷属に対し有効打を与えられる数少ない武器。その事実に、手にした聖剣を手放す事を躊躇したその一瞬が致命的なミスとなった。
 我を包み込むソレから生えた触手が素早くその細い手首に絡みつき、身を離すチャンスを摘み取ると、新たに生える続ける触手が、白銀の鎧に包まれた見事なボディへと次々と巻き付いていく。

「くッ! こ、このぉッ!!」

 必死に引き剥がそうと足搔くのだが、既に遅い。
 引き剥がそうとするもう片方の手に絡みつき、離れようと床を蹴ろうとする両脚にも、次々と触手がまとわり、着実に動きを封じていく。

「ぐぅぅ、ならばッ!!」

 突然、女勇者の身体が黄金の輝きを放ち始めた。内に宿す聖なる力”聖気”を放ち、その身が黄金の輝きに包まれると、抵抗する力が増大していく。
 魔を退ける力である”聖気”によって、巻き付いていた触手が掻き消える。その光は更に強まり、女勇者の口元に笑みが浮かびはじめた。
 だが、それも長くは続かなかった。

「――バカなッ!?」

 女勇者から放たれていた眩しいばかりの光、それは徐々に弱まり、急激に光と共に力を失っていった。
 それに戸惑いの様子を見せる女勇者であったが、それが彼女が手にしている聖剣のせいであるのに気が付いた。
 彼女の光が弱まるに呼応して、聖剣に宿った光はその輝きを増していくのだが、それが突然消滅した。

「――な、なにが起こって……ひッ?」

 聖剣の柄に嵌っている紅玉が、突如、ギョロリと紅き目となり女勇者を見つめた。それと共に白き聖剣は、その身を黒く染めたかと思うと、我と一体化し始めた。
 正面に血管を浮き出させ、ビクビクと脈動する姿は有機的で、徐々に我が身に吸収されていってその姿を消していく。

「なにをしたッ!!」

 動揺する女勇者に応えず、聖剣を飲み込んだ部位から先ほどよりも勢いよく触手を次々と生やかして改めて女勇者を絡めとっていく。
 それに対抗しようと、新たな聖気を練ろうとする女勇者であったが、巻き付いた触手たちがビクビクと脈動を繰り返すと、湧き上がった光は消滅し、代わりに触手たちの動きが活発化していった。
 その事が示す事実に気が付き、女勇者の瞳に初めて動揺の色が浮かぶ。

「バカな、聖気が……吸い取られている?」

 ”聖気”の力で常人より高い能力を有する女勇者であったが、その力の源を失えば、ただの非力な女性でしかない。
 急激に抗う力が弱まり、逆に活力を増していった触手たちが、その身を更に厳しく締め付け、完全に抵抗を封じていく。
 そうして、動きを封じられ触手によってゆっくりと中空へと吊り上げられていく女勇者。その背後では、新たに生み出された触手が絡み合い、ひとつの形を形成していくのだが、それは触手で作り上げた肉の十字架であった。
 肉の十字架から伸びた触手たちが、女勇者を引き寄せ、その身を磔にしていく。

「ぐぅ、は、放しなさいッ!! あぁ……な、なにを!?」

 肉十字架から生えた細い触手たちは女勇者を拘束するだけでなく、身に纏う鎧の隙間から入り込み、器用に止め金具を外し、鎧を剥ぎ取っていった。

――ガンッ! ガララッ……

 白銀の金属パーツが次々と床に落ちては、大きな音を立てる。
 そうして、女勇者の身からソレが嫌う金属物が排除されると、周囲でザワザワと漂っていた無数の触手たちが一斉に女勇者に襲い掛かった。

「ヒッ!? や、やめ……ヒィィッ!!」

 僅かな隙間を求め、服の袖や襟口へと触手が殺到し、我先へとその中へと侵入していく。その粘液を纏いヌメリとした触手が素肌に触れる感触に、女勇者は短い悲鳴を放ち、にキュッと眉を顰め美貌を歪めていく。

「あッ、いやッ……むッ、うむッ!!」


 その悲鳴も美唇を割り裂き、無理矢理押し入ってきた触手たちによって掻き消された。
「うぐぅ、うげぇ、ぐえぇぇぇッ!!」

 喉奥を通過していく触手の感触に激しくえづき、半ば白目を剥きながらビクビクと身体を震わせる。
 だが、触手たちはそれに構わず、ドンドンと奥へ奥へと我さきへと入っていく。
 それは、口だけでなく耳や鼻、そして股間部の穴という穴から大小問わず無数の触手たちが入り込んでいった。
 その数は時がたつほど増えていく、次第に女勇者の全身を触手が覆いつくし、毛先よりも細い極小の触手たちによって毛穴すらも侵食していくのであった。
 大量の触手が女勇者を包みこみ、蠢く触手の中へと飲み込んでいった……
 その見慣れた光景を、我はただジッと見つめていた。

(今回、ダメだったか……)

 遥か昔に同じく女勇者であった我。同じように魔王と呼ばれる存在と対峙し、見事に倒した我であったが、一瞬の油断からその実体であったソレに取り込まれてしまった。
 同化させられた我は戦う事も死ぬことも出来ず、ソレによって長き時間を生かさ続け、激しい感情と共に沸き立つ”聖気”を絞りとられる為に、休む間もなく心身を嬲られ、犯され続けるのだったが、ソレと半ば心身共に同化してしまっている為か狂う事すら許されなかった。

(いっそ狂ってしまえれば、どんなに楽だったか……)

 同化したことでソレの事を知ることができた。
 ソレは”聖気”を糧に生き続ける存在で、元いた世界で”聖気”が枯れ果てた為に、この世界へと渡ってきた高次元生命体であった。
 その神とすらも呼べる存在は、この世界では糧である”聖気”が枯渇せぬよう、効率よく摂取する手段を講じていた。
 周囲に”聖気”に強く反応する分身をばら撒き、”聖気”ならば勝てると民に思わせると共に、強き”聖気”を保有する獲物がやってくるのを待ち構えるという事だった。
 そうして、のこのこやって来た強い”聖気”の持ち主から無駄なく好物を絞りだしながら、次なる獲物を待ち構える。
 今回も新たな”聖気”を持つ人物を取り込んだことで、これでまた数十年は生きながらえてしまう。

(あぁ……だ、だれか……助け……)

 取り込まれて徐々に同化してきた先ほどの女勇者の意思が流れ込んでくる。彼女が感情が、知識や記憶と共に流れ込んできて、存在の境界が次第に曖昧へとなっていく。
 それが終われば、彼女我と一体となり、同じ生き地獄を味わう事になる。
 だが、それは数百年と繰り返された事で、我はもう既に何も感じなくなってしまっていた。

――ズルリ、ズルリ……

 獲物を捕らえた事で、この地に用は無くなったのだろう。ソレは、ゆっくりと移動を開始する。
 その内部空間に取り込んだ我や多数の元女勇者の心身を犯し”聖気”を搾り取りながら、次なる女勇者という獲物を探し求めて、この世界を徘徊するのだった。

 次の勇者こそ我らを殺して解放してくれる事を願い、我はそれをただ見続けるのだった……



ディープ・カバー7

『ディープ・カバー』 第7話を掲載しました。


 新たにfumi11様に描いていただいたイラストへと向かいつつ、相変わらず遅い歩みで1歩1歩進んでます・・・もうちょっと進めるつもりでしたが、もう、進まないのには諦めて開き直りました(汗)。

 改めて思いましたが、私のヒロインはセリフがないですね・・・口枷を噛ませてしまうからなんですが(苦笑)。

4000・・・

 気が付けば、作品の拍手ボタンを押していただいた回数が4000回を超えていました、ありがとうございます。

 読み切り品以外は、作品単位ではなくページ単位で拍手ボタンを設置しているとはいえ、純粋に押してもらえている事が自体が凄く嬉しいです。

 あまりにも嬉しさに、毎日欠かさず何度も確認しておりますから(笑)。

 本当に、ありがとうございます。

普段との・・・

 普段は冷静だったり、クールだったりする女性の垣間見せる焦りの様子や、(場合によっては無様に)動揺して狼狽える姿に妙に萌える事が多いこの頃です・・・いわゆる、これも『ギャップ萌え』の一種なのでしょうか。

 そんな女性の一面を、ついついつい虐めて自らの手で引き出したくなってしまうる自分に・・・困ったものです(苦笑)。

女性議員モノ1&2

 先日の試し書きを、少し加筆修正してみましたのでアップします。

 今回のヒロインさんには、選択肢が一応ある状況に追い込んでみました。
 (出来る、出来ないは別にして)拒否する選択肢がある中で『ヒロインが自分で決めた』という事実がポイントだったりしますが、やっぱり無理やり感が満載ですね(汗)。

 しかし、今回は、あんまり先を考えずに、思いつつままに書いてるので全体量を見積もってませんが・・・ズルズルと長くなりそうな香りがしてきました(大汗)。

 そういえば、タイトルも仮決めしたいところですが、これもいつも悩むのですよね・・・いいタイトル候補はないでしょうか?(苦笑)


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●女性議員モノ(仮)

【1】

 夜も更け、地方都市の郊外に立つ広大な日本庭園を持つ屋敷。その廊下を主である灰原 収蔵(はいばら しゅうぞう)が歩いていた。
 戦後の混乱期に暗躍した男で、もうかなりの高齢であるはずだが、背筋をまっすぐに伸ばし和服を着流し、杖も突かずにしっかりと歩く姿は髪さえ黒く染めれば50代といっても通用しそうだ。大きな鷲鼻と鋭い眼光によって獲物を狙う猛禽類のような雰囲気を纏う、そんな人物であった。
 そのひと睨みで政財界の重鎮たちをも竦み上がらせる男が、今宵は珍しく上機嫌だった。
 とある部屋の前で立ち止まると、控えていた着物を着た女中が襖を開く。その中に、目的の人物がいるのを確認すると、灰原は口端を吊り上げる。

「やぁ、こんな夜分に議員の先生をお呼び立てした上に、お待たせして申し訳ない」

 微笑みながら声を掛けるのだが、重厚な声質とその容貌の為に獲物を前にした肉食獣のようにしか見えない。

「いえ、ですが、この後も予定が入ってますので、要件は手短にお願いします」

 対するは透き通った凛とした声で、その主は座布団の上で背筋を伸ばし正座する一人の女性であった。
 地味なダークグレーのスーツスカートに身を固め、癖のある黒髪をバレッタでアップにまとめている。最低限の化粧で地味にしようと努力しているようだが、元々のその知的な美貌と男ならむしゃぶりつきたくなるような魅惑的なボディを隠す事が出来ずにいた。
 灰原は応接用のテーブルを挟んで女性の正面へと座ると、改めて目の前の女性を値踏みするかのように見つめるのだった。



 その女性、出水 巴(いずみ ともえ)は目の前の男の不躾な視線に、眉を顰めたくなるのを必死に堪えていた。
 現職の市議会議員である巴であるが、相手がこの地では絶大な裏の権力を誇っているのを嫌というほど知っていた。

(こんな時間に呼び出した理由も、おおよそ検討が付いてるわ)

 巴は、数日後に控えた議会で現職議員による大企業誘致の際の不正行為の数々を告発する用意をしていた。その背後には、この灰原がいるのがわかっていた。
 元々、この件を調べていたのは今の巴と同じく市議会議員であった夫であった。その夫は、3年前に不慮の事故に巻き込まれ亡き人となっていた。残された日記に記された情報から亡き夫の遺志を知り、夫の友人議員たちや義娘に支えられながら夫の跡を継ぐべく市議会議員となり、街の不正を正していった。そして、その元凶である灰原一派を告発に足りうる証拠をついに集めたのだった。

(その情報をどこからか嗅ぎ付けて、懐柔か脅しで、証拠を握り潰そうというのでしょう)

 ここに呼び出された事は、親友であり信頼できる秘書の葵祭 理加(あおい りか)に伝えてあり、時間通りに戻らなければ、警察に通報する手はずになっていた。だがら、ここで下手に巴に手を出せば、議会を待つまでもなくこの男を逮捕する事も可能だった。

「それで、お話というのは、なんでしょうか?」
「ふむ……それなんだが、ちょっと困った事が起こっているんだが、さて、どう話を切り出すべきか……」

 不敵な笑みを浮かべ尋ねる巴に対し、不遜を絵にかいたような男が顎の髭を擦りながら、ワザとらしく悩んでいる様子をみせる。

「では、時間が掛かるようですので、後日に改めてお伺いします」

 そう言い放つと立ち上がる素振りを見せる巴に、灰原は大きなため息をついた。

「まったく、駆け引きというモノを知らん所は、夫であったあの男にそっくりだなッ」
「えぇ、その駆け引きとやらで黒いモノを白と言う気はありませんわ」

 立ち上がった巴は、目の前で睨み付ける老人の鋭い眼光を正面から受け止めた。
 だが、先に視線を外したのは灰原であった。

「ふん、まぁいい。これを見てもそう言えるか、教えてもらおうかッ」

 その言葉を待って控えていたのだろう。襖を開けて黒スーツ姿のスキンヘッドの男が入ってくると手にしていたファイルを差し出した。それを受け取った灰原は、ファイルを開き、目を通すと、口元を嫌らしく歪めた。

「……それは?」
「まぁ、待ちたまえ。ところでキミは出水の後妻だったな。義理の娘は今は大学生だったな。その子とは仲良くやれているかね?」
「な、なにを突然……」
「いやなに、今は東京に行って国立大学に通っている聞いたものでね。ちょっと、調べさせてもらったんだよ」

 そう言って、開いたまま差し出されたファイルには、分厚いの報告書の束と共に一人の少女の写真が何枚もファイルングされていた。
 ほとんどが物陰からの隠し撮りらしく、その多くが男女の性行為を撮影したものだった。若い男女が欲望のままに絡み合う姿。だが、撮影の日を追うごとにそれに変化が現れる。スカーフを使った目隠しや手首を縛る行為から、手錠や黒革製の手枷、そして麻縄を用いての本格的な緊縛へと徐々にSM要素を濃くしてアブノーマル度を増していく。
 今どきの若いカップルがソフトSMと称して、刺激を求めてそういう行為にふける場合もあるのは巴も理解していた。
 だが、その少女が義理の娘である出水 莉亜(いずみ りあ)であると、話は違った。 震える手でファイルを捲っていくと、他のカップルとのスワッピングから4P、そして、緊縛された状態での複数の男性を相手にしていく姿を見させられると、巴は動揺を隠せなかった。

「そ、そんな……」

 勝気だけど、恋に少し臆病なところのあった莉亜。母親というよりも歳の離れた姉に接するように、こちらにいる時は、彼女からそういう悩み事の相談を多く受けていた。
 そんな清純そうに微笑んでいた莉亜と、写真の扇情的で淫らな表情を浮かべた姿が一致しなかった。

(いったい、いつから……)

 会ったのは1ヶ月前で、ここ2週間ほどは電話やメールが途絶えがちだった。
 
「あぁぁンッ」

 混乱する思考で必死に頭を働かせる巴の耳に、欲情した雌声が飛び込んでくる。

「えッ……」

 気が付けば、部屋に備え付けられた大型モニターに莉亜の姿が映し出されていた。

「写真が合成だと思われても困るのでね」

 灰原はそういって手元のリモコンで音量を上げていく。

「……莉亜ちゃん」

 後ろ手に緊縛された義理の娘が寝そべる男の上で淫らに腰を振る。そんな姿を、巴はただ呆然と見つめるのだった。



【2】

 全裸になった長い黒髪の少女がドス黒く染められた麻縄で縛られ、床に置かれたマットの上で寝そべる男の上に跨がっていた。
 背後で組まされた両手首に麻縄が巻き付き、高手に引き上げると共に、その縄尻が大きくはないが形のよい乳房の上下に巻き付き、胸縄の間から根本を縊りだされた乳房が、少女が身体を跳ねるたびに弾んでいる。
 首には大型犬にでも嵌めるような真紅の革の首輪が巻き付き、そこから伸びたリードを脇に立つ男に握られている事で、少女の立場が嫌が上でもわかった。
 だが、その顔に浮かぶのは屈辱に歪む表情ではなく、目を潤ませ、どこか陶酔したような表情だった。

「さぁ、莉亜。ご挨拶だッ」
「あぁぁ、はいッ」

 リードを握る男の声は優しげでありながら、どこか抗う事を許さい力を持ったものだった。
 清楚な外見とは裏腹に芯が強く、常に男性とは同等以上であろうとしていたはずの莉亜が、男の命令に素直に頷くと、首を伸ばし男の股間へと顔を近寄る。
 ウットリするように男の標準よりも太く大きい硬く勃起した怒張を見つめ、キスをし、ゆっくりと舌を這わせていく。

「うぅ、イイよ。だいぶ上手くなったね」
「はぁン、ありがとうございます」

 褒められた事に目を伏せ照れたように頬を赤らめる。
 その姿に以前の姿を重ねるのだが、再び男の肉茎へと舌を差し出し、舐め上げながら奉仕すると隷属の喜び浮かべ始める。
 万遍なく舐め上げ、熱い眼差しで男を見上げる。その間も寝そべった男の上に跨った莉亜の腰は淫らに打ち振るわれていた。

「もぅ、我慢できずに咥えたいのかい?」
「はいッ、お願いします。どうか莉亜のお口に下さい」

 欲情しきった声で男にねだる姿は、雌そのものだった。
 熱い吐息と共に可愛らしい小さな口を開き、亀頭部分をゆっくりと咥えていく。

「うむ……うッ……うぐぅ……」

 まだ慣れていないのか、喉に異物が入り込む感触にえづき、背中を震わせながらも、必死に咥えこんでいく。その莉亜の頭を男は優しく撫でてやりながら、口元に嗜虐の笑みを浮かべていた。



「――もう、止めてッ!!」

 もう、巴には見ていられなかった。両手で耳を抑えながら拒絶するように首を振る。
 
「ふむ、これで作り物でないのは信じて貰えたかな?」

 リモコンで映像静止しながら灰原は口端を吊り上げる。

「よくも莉亜ちゃんを……」
「少し勘違いしているようだな。言っておくが儂が指示を出したのは、アンタの周りの身辺調査だけだ」
「信じられるものですかッ」
「まぁ、信じる信じないはアンタの自由だ。ただ、アンタの娘さんが淫行をしている事実は変わらんがな。先ほどの映像を見ても、強要されているようには見えなかっただろう?」
「そ、それは……」

 その沈黙が灰原の指摘が正しいと認めているようなものだった。
 
「野党一押しの新鋭の美人市議会議員の娘がSM淫行三昧……この事実がマスコミに嗅ぎ付けられてでもしたら大変だな。もちろんお嬢さんもね」
「くッ……脅すつもり……ですか?」
「いや、提案だな。詳しく調べてみて分かったのだが、お嬢さんの相手のこの男。名は水沢 渡(みずさわ わたる)。そちらの資料に詳細は書いてるがお嬢さんと同じ国立大学に通う学生だが、父親が竜泉会の若頭らしい」
「――なッ!?」
「しかも、過去にこうして手を出した女性たちを、あぁして性奴に堕としては父親の店に売り飛ばしているらしいな」
「そんな……」
「どうだね。事態はアンタが想像していたよりも悪いだろう? 奴らは執拗だからな、骨の髄までしゃぶりつくすから、母親が美人市議会議員として有名なアンタと分かれば、手を伸ばしてくるぞ。それを儂なら何とかしてやれる力を持っている」
「……」

 灰原に突きつけられる数々の事実に、巴の顔色が悪くなっていく。

「それで……私に……どうしろと?」

 キッと灰原を睨み付けながら、巴は肩を震わせながら、なんとか声を絞り出す。

「そうだな……まずは、アンタたちが今度、市議会に提出しようとしている案件を取り下げろ……」
「……それは……」
「……と言われてもアンタも立場も悪くなるだろう? だから、アンタが密かに持っている儂に関する部分だけ握り潰してくれればイイ」
「……え?」
「ボロを出して尻尾を掴まれた嘉瀬も阿佐原には、少し臭い飯でも食ってもらうとしよう。下手を打ったら責任を取るのは当たり前の話だしな。アンタも儂と裏取引するなんて本当はイヤだろうが、そう悪い条件でもあるまい?」
「……まずは……と言うからには、他にもあるのでしょう? 返答は、それを聞いてからよ」

 巴の言葉に灰原は乾いた笑みを浮かべる。
 灰原を引き摺り下ろす為にいままで頑張ってきた巴にとって、本来なら検討の余地すらない話だった。だが、そこに娘の莉亜の将来が絡むとなると、その決断を下すのは難しかった。

「アンタを1一晩、儂のモノにしたい」
「……ッ!?」

 灰原の言葉に、巴の表情は更に険しくなる。

「そのままの意味だよ。有能な市議会議員としてのアンタの能力も買っているが、その美貌を含めて女としてのアンタを高く買っているのだよ」
「ふ、ふ、ふざけないでッ!!」

 顔を紅潮させ、怒りで肩を震わせる巴。そんな態度を予想していたのだろう、灰原はさして気にした様子もなく、会話を続ける。

「それに、これはアンタのお嬢さんの為でもある」
「……なぜ、莉亜ちゃんの為になるのよッ?」
「まぁ、考えてみろ。仮に儂の力でお嬢さんを取り戻したとしよう。だが、当人は危機を感じていない状態で、突然、無理やり恋人と思い込んでいる男と引き剥がされるんだ。普通、『なぜ?』だと思うだろう。SM行為に耽って淫らに調教されていた事、それをアンタに知られていた事にも遅かれ気付く事になるだろう。その時、もしアンタがその身を穢してでも自分を救ったと知れば……少しは違うのではないかな?」
「……なッ……それは……」

 莉亜の事を持ち出されると、普段は気丈な巴に動揺が走る。
 想定外の状況に追い込まれた巴、その心を守る鎧の合間から、灰原の囁きがスルスルと触手のように入り込み、ゆっくりと浸食していく。

「それに儂にもSM趣味があってな。アンタが同じ目を経験したとなれば、お嬢さんの状態や苦しみ共有できる分、お嬢さんを助ける手助けにもなる……そう思わないか?」
「そ、そんな馬鹿な話……」
「儂を信用できないのも当たり前だろうな。それなら、その時の画像を証拠としてアンタにやろう。仮に儂が約束を守らなかった場合、それをバラなくなりすれば良かろう? どうせ、この会話も録音するなり、賢いアンタの事だ、なら何かしら手を打っているのだろう?」
「……」
「それに、仮にこの提案をアンタが断っても、儂の人生が終わる訳ではない。だが、アンタの方は、お嬢さんも含めて……どうなることだろうね?」

 確かに灰原の力をもってすれば、例え法廷に引き摺り出したとしても、その権力と財力でなんとかしてしまう可能性があった。よしんば悪事を白日のもとに曝したとして悪事から手を引かせたとしても、どんな高額の保釈金も簡単に支払い、悠々と日々を過ごす可能性も大いにある。
 それに対して、巴と莉亜は遥かに高いリスクを背負わされ、窮地に立たされているのだった。

「どうするかね?」

――ギリッ

 自分の立たされた状況を再確認すると、巴は悔しさのあまり美唇を噛みしめる。

「す、少しだけ……考える時間を……下さい」

 痛いぐらい握りしめた拳を震わせながら今の巴には、血を吐く思いでその言葉を吐き出すのがやっとだった。


プロフィール

久遠 真人

Author:久遠 真人
 ようこそ、いらっしゃいました。

 ここは久遠 真人が主催するSM小説サイト『HEAVEN'S DOOR』の雑記帳的な位置づけのブログです。

 お戻りになる際は、右の【リンク】『HEAVEN’S DOOR』をクリックして下さい。

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