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ブレイベスト・イーター

 非現代モノの練習がてら、ちょっと実験で試し書きしてみました。
 「エロさ」というより「無残さ」とかがメインの味となりますでしょうか(汗)。
 
 とはいえ、触手モノとしてちゃんと書くなら、もう少しネットリと触手描写を盛るべきなんでしょうね(苦笑)。



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『ブレイベスト・イーター』

――カッ、カッ、カッ……

 大理石の廊下を駆け抜けてくる音が徐々に近づいてくる。

(ようやく……ここに来る……)

 かつて、この国の王が座っていた豪華な玉座に座っていた我は、ゆっくりと瞼を開く。
 それと同時に、正面の謁見の間へと入るの大きな両開きの扉が激しい音と共に開け放たれ、一人の剣士が姿を現した。
 純白であった白きマントや身に纏う白銀の鎧を返り血で朱で染めた姿で、ギッとこちらを睨み付けるのは、一人の女性であった。
 天窓から差し込む月明かりを浴びて煌びやかに光る金の長髪を靡かせ、まだ少女らしさの残る清楚で知的な印象を与える美貌を引き締め、透き通るような碧い瞳に強い決意の光を宿して毅然と立っている姿は、まるで絵画のようで見惚れてしまいそうであった。
 その女性が巷では『聖剣に認めらし聖なる力を持つ者』『天の使いの代行者』『覇魔の勇者』など、様々な名で民に呼ばれ、慕い敬われているのは既に知っていた。
 そして、その女性が我を倒しに来たであろうことも……。

「貴様が魔王かッ!!」

 手にしていた柄に紅玉の嵌った白銀の刃の聖剣を構え、そう叫ぶ。
 『魔王』、そう名乗った事など一度もないはずだが、いつからかそれが我を示す言葉として民の間で定着しているのは認識している。
 その詰問に答える代わりに、我の身がゆっくりと玉座から立ち上がる。
 それを戦闘の意思と捉えたのか、女勇者は素早く床を蹴ると、神速と呼べる速さで間合いを一瞬で詰め、手にした聖剣を切り上げてきた。

「成敗ッ!!」

 無駄のまったくない動きで、必殺の刃が私に迫る。
 それに対し我が身は反応を示さず、ただ素直にその刃を受け止めるだけだった。

――グニュッ

 我が身に纏っている漆黒のマント。いや、正確にはそう見えるソレは、食い込んできた白銀の刃を優しく受け止め包み込む。

「――なッ!?」

 聖剣を絡め取られ抜けなくなった事に動揺する女勇者。
 覇魔の力を持つといわれ、我が眷属に対し有効打を与えられる数少ない武器。その事実に、手にした聖剣を手放す事を躊躇したその一瞬が致命的なミスとなった。
 我を包み込むソレから生えた触手が素早くその細い手首に絡みつき、身を離すチャンスを摘み取ると、新たに生える続ける触手が、白銀の鎧に包まれた見事なボディへと次々と巻き付いていく。

「くッ! こ、このぉッ!!」

 必死に引き剥がそうと足搔くのだが、既に遅い。
 引き剥がそうとするもう片方の手に絡みつき、離れようと床を蹴ろうとする両脚にも、次々と触手がまとわり、着実に動きを封じていく。

「ぐぅぅ、ならばッ!!」

 突然、女勇者の身体が黄金の輝きを放ち始めた。内に宿す聖なる力”聖気”を放ち、その身が黄金の輝きに包まれると、抵抗する力が増大していく。
 魔を退ける力である”聖気”によって、巻き付いていた触手が掻き消える。その光は更に強まり、女勇者の口元に笑みが浮かびはじめた。
 だが、それも長くは続かなかった。

「――バカなッ!?」

 女勇者から放たれていた眩しいばかりの光、それは徐々に弱まり、急激に光と共に力を失っていった。
 それに戸惑いの様子を見せる女勇者であったが、それが彼女が手にしている聖剣のせいであるのに気が付いた。
 彼女の光が弱まるに呼応して、聖剣に宿った光はその輝きを増していくのだが、それが突然消滅した。

「――な、なにが起こって……ひッ?」

 聖剣の柄に嵌っている紅玉が、突如、ギョロリと紅き目となり女勇者を見つめた。それと共に白き聖剣は、その身を黒く染めたかと思うと、我と一体化し始めた。
 正面に血管を浮き出させ、ビクビクと脈動する姿は有機的で、徐々に我が身に吸収されていってその姿を消していく。

「なにをしたッ!!」

 動揺する女勇者に応えず、聖剣を飲み込んだ部位から先ほどよりも勢いよく触手を次々と生やかして改めて女勇者を絡めとっていく。
 それに対抗しようと、新たな聖気を練ろうとする女勇者であったが、巻き付いた触手たちがビクビクと脈動を繰り返すと、湧き上がった光は消滅し、代わりに触手たちの動きが活発化していった。
 その事が示す事実に気が付き、女勇者の瞳に初めて動揺の色が浮かぶ。

「バカな、聖気が……吸い取られている?」

 ”聖気”の力で常人より高い能力を有する女勇者であったが、その力の源を失えば、ただの非力な女性でしかない。
 急激に抗う力が弱まり、逆に活力を増していった触手たちが、その身を更に厳しく締め付け、完全に抵抗を封じていく。
 そうして、動きを封じられ触手によってゆっくりと中空へと吊り上げられていく女勇者。その背後では、新たに生み出された触手が絡み合い、ひとつの形を形成していくのだが、それは触手で作り上げた肉の十字架であった。
 肉の十字架から伸びた触手たちが、女勇者を引き寄せ、その身を磔にしていく。

「ぐぅ、は、放しなさいッ!! あぁ……な、なにを!?」

 肉十字架から生えた細い触手たちは女勇者を拘束するだけでなく、身に纏う鎧の隙間から入り込み、器用に止め金具を外し、鎧を剥ぎ取っていった。

――ガンッ! ガララッ……

 白銀の金属パーツが次々と床に落ちては、大きな音を立てる。
 そうして、女勇者の身からソレが嫌う金属物が排除されると、周囲でザワザワと漂っていた無数の触手たちが一斉に女勇者に襲い掛かった。

「ヒッ!? や、やめ……ヒィィッ!!」

 僅かな隙間を求め、服の袖や襟口へと触手が殺到し、我先へとその中へと侵入していく。その粘液を纏いヌメリとした触手が素肌に触れる感触に、女勇者は短い悲鳴を放ち、にキュッと眉を顰め美貌を歪めていく。

「あッ、いやッ……むッ、うむッ!!」


 その悲鳴も美唇を割り裂き、無理矢理押し入ってきた触手たちによって掻き消された。
「うぐぅ、うげぇ、ぐえぇぇぇッ!!」

 喉奥を通過していく触手の感触に激しくえづき、半ば白目を剥きながらビクビクと身体を震わせる。
 だが、触手たちはそれに構わず、ドンドンと奥へ奥へと我さきへと入っていく。
 それは、口だけでなく耳や鼻、そして股間部の穴という穴から大小問わず無数の触手たちが入り込んでいった。
 その数は時がたつほど増えていく、次第に女勇者の全身を触手が覆いつくし、毛先よりも細い極小の触手たちによって毛穴すらも侵食していくのであった。
 大量の触手が女勇者を包みこみ、蠢く触手の中へと飲み込んでいった……
 その見慣れた光景を、我はただジッと見つめていた。

(今回、ダメだったか……)

 遥か昔に同じく女勇者であった我。同じように魔王と呼ばれる存在と対峙し、見事に倒した我であったが、一瞬の油断からその実体であったソレに取り込まれてしまった。
 同化させられた我は戦う事も死ぬことも出来ず、ソレによって長き時間を生かさ続け、激しい感情と共に沸き立つ”聖気”を絞りとられる為に、休む間もなく心身を嬲られ、犯され続けるのだったが、ソレと半ば心身共に同化してしまっている為か狂う事すら許されなかった。

(いっそ狂ってしまえれば、どんなに楽だったか……)

 同化したことでソレの事を知ることができた。
 ソレは”聖気”を糧に生き続ける存在で、元いた世界で”聖気”が枯れ果てた為に、この世界へと渡ってきた高次元生命体であった。
 その神とすらも呼べる存在は、この世界では糧である”聖気”が枯渇せぬよう、効率よく摂取する手段を講じていた。
 周囲に”聖気”に強く反応する分身をばら撒き、”聖気”ならば勝てると民に思わせると共に、強き”聖気”を保有する獲物がやってくるのを待ち構えるという事だった。
 そうして、のこのこやって来た強い”聖気”の持ち主から無駄なく好物を絞りだしながら、次なる獲物を待ち構える。
 今回も新たな”聖気”を持つ人物を取り込んだことで、これでまた数十年は生きながらえてしまう。

(あぁ……だ、だれか……助け……)

 取り込まれて徐々に同化してきた先ほどの女勇者の意思が流れ込んでくる。彼女が感情が、知識や記憶と共に流れ込んできて、存在の境界が次第に曖昧へとなっていく。
 それが終われば、彼女我と一体となり、同じ生き地獄を味わう事になる。
 だが、それは数百年と繰り返された事で、我はもう既に何も感じなくなってしまっていた。

――ズルリ、ズルリ……

 獲物を捕らえた事で、この地に用は無くなったのだろう。ソレは、ゆっくりと移動を開始する。
 その内部空間に取り込んだ我や多数の元女勇者の心身を犯し”聖気”を搾り取りながら、次なる女勇者という獲物を探し求めて、この世界を徘徊するのだった。

 次の勇者こそ我らを殺して解放してくれる事を願い、我はそれをただ見続けるのだった……



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