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女性議員モノ1&2

 先日の試し書きを、少し加筆修正してみましたのでアップします。

 今回のヒロインさんには、選択肢が一応ある状況に追い込んでみました。
 (出来る、出来ないは別にして)拒否する選択肢がある中で『ヒロインが自分で決めた』という事実がポイントだったりしますが、やっぱり無理やり感が満載ですね(汗)。

 しかし、今回は、あんまり先を考えずに、思いつつままに書いてるので全体量を見積もってませんが・・・ズルズルと長くなりそうな香りがしてきました(大汗)。

 そういえば、タイトルも仮決めしたいところですが、これもいつも悩むのですよね・・・いいタイトル候補はないでしょうか?(苦笑)


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●女性議員モノ(仮)

【1】

 夜も更け、地方都市の郊外に立つ広大な日本庭園を持つ屋敷。その廊下を主である灰原 収蔵(はいばら しゅうぞう)が歩いていた。
 戦後の混乱期に暗躍した男で、もうかなりの高齢であるはずだが、背筋をまっすぐに伸ばし和服を着流し、杖も突かずにしっかりと歩く姿は髪さえ黒く染めれば50代といっても通用しそうだ。大きな鷲鼻と鋭い眼光によって獲物を狙う猛禽類のような雰囲気を纏う、そんな人物であった。
 そのひと睨みで政財界の重鎮たちをも竦み上がらせる男が、今宵は珍しく上機嫌だった。
 とある部屋の前で立ち止まると、控えていた着物を着た女中が襖を開く。その中に、目的の人物がいるのを確認すると、灰原は口端を吊り上げる。

「やぁ、こんな夜分に議員の先生をお呼び立てした上に、お待たせして申し訳ない」

 微笑みながら声を掛けるのだが、重厚な声質とその容貌の為に獲物を前にした肉食獣のようにしか見えない。

「いえ、ですが、この後も予定が入ってますので、要件は手短にお願いします」

 対するは透き通った凛とした声で、その主は座布団の上で背筋を伸ばし正座する一人の女性であった。
 地味なダークグレーのスーツスカートに身を固め、癖のある黒髪をバレッタでアップにまとめている。最低限の化粧で地味にしようと努力しているようだが、元々のその知的な美貌と男ならむしゃぶりつきたくなるような魅惑的なボディを隠す事が出来ずにいた。
 灰原は応接用のテーブルを挟んで女性の正面へと座ると、改めて目の前の女性を値踏みするかのように見つめるのだった。



 その女性、出水 巴(いずみ ともえ)は目の前の男の不躾な視線に、眉を顰めたくなるのを必死に堪えていた。
 現職の市議会議員である巴であるが、相手がこの地では絶大な裏の権力を誇っているのを嫌というほど知っていた。

(こんな時間に呼び出した理由も、おおよそ検討が付いてるわ)

 巴は、数日後に控えた議会で現職議員による大企業誘致の際の不正行為の数々を告発する用意をしていた。その背後には、この灰原がいるのがわかっていた。
 元々、この件を調べていたのは今の巴と同じく市議会議員であった夫であった。その夫は、3年前に不慮の事故に巻き込まれ亡き人となっていた。残された日記に記された情報から亡き夫の遺志を知り、夫の友人議員たちや義娘に支えられながら夫の跡を継ぐべく市議会議員となり、街の不正を正していった。そして、その元凶である灰原一派を告発に足りうる証拠をついに集めたのだった。

(その情報をどこからか嗅ぎ付けて、懐柔か脅しで、証拠を握り潰そうというのでしょう)

 ここに呼び出された事は、親友であり信頼できる秘書の葵祭 理加(あおい りか)に伝えてあり、時間通りに戻らなければ、警察に通報する手はずになっていた。だがら、ここで下手に巴に手を出せば、議会を待つまでもなくこの男を逮捕する事も可能だった。

「それで、お話というのは、なんでしょうか?」
「ふむ……それなんだが、ちょっと困った事が起こっているんだが、さて、どう話を切り出すべきか……」

 不敵な笑みを浮かべ尋ねる巴に対し、不遜を絵にかいたような男が顎の髭を擦りながら、ワザとらしく悩んでいる様子をみせる。

「では、時間が掛かるようですので、後日に改めてお伺いします」

 そう言い放つと立ち上がる素振りを見せる巴に、灰原は大きなため息をついた。

「まったく、駆け引きというモノを知らん所は、夫であったあの男にそっくりだなッ」
「えぇ、その駆け引きとやらで黒いモノを白と言う気はありませんわ」

 立ち上がった巴は、目の前で睨み付ける老人の鋭い眼光を正面から受け止めた。
 だが、先に視線を外したのは灰原であった。

「ふん、まぁいい。これを見てもそう言えるか、教えてもらおうかッ」

 その言葉を待って控えていたのだろう。襖を開けて黒スーツ姿のスキンヘッドの男が入ってくると手にしていたファイルを差し出した。それを受け取った灰原は、ファイルを開き、目を通すと、口元を嫌らしく歪めた。

「……それは?」
「まぁ、待ちたまえ。ところでキミは出水の後妻だったな。義理の娘は今は大学生だったな。その子とは仲良くやれているかね?」
「な、なにを突然……」
「いやなに、今は東京に行って国立大学に通っている聞いたものでね。ちょっと、調べさせてもらったんだよ」

 そう言って、開いたまま差し出されたファイルには、分厚いの報告書の束と共に一人の少女の写真が何枚もファイルングされていた。
 ほとんどが物陰からの隠し撮りらしく、その多くが男女の性行為を撮影したものだった。若い男女が欲望のままに絡み合う姿。だが、撮影の日を追うごとにそれに変化が現れる。スカーフを使った目隠しや手首を縛る行為から、手錠や黒革製の手枷、そして麻縄を用いての本格的な緊縛へと徐々にSM要素を濃くしてアブノーマル度を増していく。
 今どきの若いカップルがソフトSMと称して、刺激を求めてそういう行為にふける場合もあるのは巴も理解していた。
 だが、その少女が義理の娘である出水 莉亜(いずみ りあ)であると、話は違った。 震える手でファイルを捲っていくと、他のカップルとのスワッピングから4P、そして、緊縛された状態での複数の男性を相手にしていく姿を見させられると、巴は動揺を隠せなかった。

「そ、そんな……」

 勝気だけど、恋に少し臆病なところのあった莉亜。母親というよりも歳の離れた姉に接するように、こちらにいる時は、彼女からそういう悩み事の相談を多く受けていた。
 そんな清純そうに微笑んでいた莉亜と、写真の扇情的で淫らな表情を浮かべた姿が一致しなかった。

(いったい、いつから……)

 会ったのは1ヶ月前で、ここ2週間ほどは電話やメールが途絶えがちだった。
 
「あぁぁンッ」

 混乱する思考で必死に頭を働かせる巴の耳に、欲情した雌声が飛び込んでくる。

「えッ……」

 気が付けば、部屋に備え付けられた大型モニターに莉亜の姿が映し出されていた。

「写真が合成だと思われても困るのでね」

 灰原はそういって手元のリモコンで音量を上げていく。

「……莉亜ちゃん」

 後ろ手に緊縛された義理の娘が寝そべる男の上で淫らに腰を振る。そんな姿を、巴はただ呆然と見つめるのだった。



【2】

 全裸になった長い黒髪の少女がドス黒く染められた麻縄で縛られ、床に置かれたマットの上で寝そべる男の上に跨がっていた。
 背後で組まされた両手首に麻縄が巻き付き、高手に引き上げると共に、その縄尻が大きくはないが形のよい乳房の上下に巻き付き、胸縄の間から根本を縊りだされた乳房が、少女が身体を跳ねるたびに弾んでいる。
 首には大型犬にでも嵌めるような真紅の革の首輪が巻き付き、そこから伸びたリードを脇に立つ男に握られている事で、少女の立場が嫌が上でもわかった。
 だが、その顔に浮かぶのは屈辱に歪む表情ではなく、目を潤ませ、どこか陶酔したような表情だった。

「さぁ、莉亜。ご挨拶だッ」
「あぁぁ、はいッ」

 リードを握る男の声は優しげでありながら、どこか抗う事を許さい力を持ったものだった。
 清楚な外見とは裏腹に芯が強く、常に男性とは同等以上であろうとしていたはずの莉亜が、男の命令に素直に頷くと、首を伸ばし男の股間へと顔を近寄る。
 ウットリするように男の標準よりも太く大きい硬く勃起した怒張を見つめ、キスをし、ゆっくりと舌を這わせていく。

「うぅ、イイよ。だいぶ上手くなったね」
「はぁン、ありがとうございます」

 褒められた事に目を伏せ照れたように頬を赤らめる。
 その姿に以前の姿を重ねるのだが、再び男の肉茎へと舌を差し出し、舐め上げながら奉仕すると隷属の喜び浮かべ始める。
 万遍なく舐め上げ、熱い眼差しで男を見上げる。その間も寝そべった男の上に跨った莉亜の腰は淫らに打ち振るわれていた。

「もぅ、我慢できずに咥えたいのかい?」
「はいッ、お願いします。どうか莉亜のお口に下さい」

 欲情しきった声で男にねだる姿は、雌そのものだった。
 熱い吐息と共に可愛らしい小さな口を開き、亀頭部分をゆっくりと咥えていく。

「うむ……うッ……うぐぅ……」

 まだ慣れていないのか、喉に異物が入り込む感触にえづき、背中を震わせながらも、必死に咥えこんでいく。その莉亜の頭を男は優しく撫でてやりながら、口元に嗜虐の笑みを浮かべていた。



「――もう、止めてッ!!」

 もう、巴には見ていられなかった。両手で耳を抑えながら拒絶するように首を振る。
 
「ふむ、これで作り物でないのは信じて貰えたかな?」

 リモコンで映像静止しながら灰原は口端を吊り上げる。

「よくも莉亜ちゃんを……」
「少し勘違いしているようだな。言っておくが儂が指示を出したのは、アンタの周りの身辺調査だけだ」
「信じられるものですかッ」
「まぁ、信じる信じないはアンタの自由だ。ただ、アンタの娘さんが淫行をしている事実は変わらんがな。先ほどの映像を見ても、強要されているようには見えなかっただろう?」
「そ、それは……」

 その沈黙が灰原の指摘が正しいと認めているようなものだった。
 
「野党一押しの新鋭の美人市議会議員の娘がSM淫行三昧……この事実がマスコミに嗅ぎ付けられてでもしたら大変だな。もちろんお嬢さんもね」
「くッ……脅すつもり……ですか?」
「いや、提案だな。詳しく調べてみて分かったのだが、お嬢さんの相手のこの男。名は水沢 渡(みずさわ わたる)。そちらの資料に詳細は書いてるがお嬢さんと同じ国立大学に通う学生だが、父親が竜泉会の若頭らしい」
「――なッ!?」
「しかも、過去にこうして手を出した女性たちを、あぁして性奴に堕としては父親の店に売り飛ばしているらしいな」
「そんな……」
「どうだね。事態はアンタが想像していたよりも悪いだろう? 奴らは執拗だからな、骨の髄までしゃぶりつくすから、母親が美人市議会議員として有名なアンタと分かれば、手を伸ばしてくるぞ。それを儂なら何とかしてやれる力を持っている」
「……」

 灰原に突きつけられる数々の事実に、巴の顔色が悪くなっていく。

「それで……私に……どうしろと?」

 キッと灰原を睨み付けながら、巴は肩を震わせながら、なんとか声を絞り出す。

「そうだな……まずは、アンタたちが今度、市議会に提出しようとしている案件を取り下げろ……」
「……それは……」
「……と言われてもアンタも立場も悪くなるだろう? だから、アンタが密かに持っている儂に関する部分だけ握り潰してくれればイイ」
「……え?」
「ボロを出して尻尾を掴まれた嘉瀬も阿佐原には、少し臭い飯でも食ってもらうとしよう。下手を打ったら責任を取るのは当たり前の話だしな。アンタも儂と裏取引するなんて本当はイヤだろうが、そう悪い条件でもあるまい?」
「……まずは……と言うからには、他にもあるのでしょう? 返答は、それを聞いてからよ」

 巴の言葉に灰原は乾いた笑みを浮かべる。
 灰原を引き摺り下ろす為にいままで頑張ってきた巴にとって、本来なら検討の余地すらない話だった。だが、そこに娘の莉亜の将来が絡むとなると、その決断を下すのは難しかった。

「アンタを1一晩、儂のモノにしたい」
「……ッ!?」

 灰原の言葉に、巴の表情は更に険しくなる。

「そのままの意味だよ。有能な市議会議員としてのアンタの能力も買っているが、その美貌を含めて女としてのアンタを高く買っているのだよ」
「ふ、ふ、ふざけないでッ!!」

 顔を紅潮させ、怒りで肩を震わせる巴。そんな態度を予想していたのだろう、灰原はさして気にした様子もなく、会話を続ける。

「それに、これはアンタのお嬢さんの為でもある」
「……なぜ、莉亜ちゃんの為になるのよッ?」
「まぁ、考えてみろ。仮に儂の力でお嬢さんを取り戻したとしよう。だが、当人は危機を感じていない状態で、突然、無理やり恋人と思い込んでいる男と引き剥がされるんだ。普通、『なぜ?』だと思うだろう。SM行為に耽って淫らに調教されていた事、それをアンタに知られていた事にも遅かれ気付く事になるだろう。その時、もしアンタがその身を穢してでも自分を救ったと知れば……少しは違うのではないかな?」
「……なッ……それは……」

 莉亜の事を持ち出されると、普段は気丈な巴に動揺が走る。
 想定外の状況に追い込まれた巴、その心を守る鎧の合間から、灰原の囁きがスルスルと触手のように入り込み、ゆっくりと浸食していく。

「それに儂にもSM趣味があってな。アンタが同じ目を経験したとなれば、お嬢さんの状態や苦しみ共有できる分、お嬢さんを助ける手助けにもなる……そう思わないか?」
「そ、そんな馬鹿な話……」
「儂を信用できないのも当たり前だろうな。それなら、その時の画像を証拠としてアンタにやろう。仮に儂が約束を守らなかった場合、それをバラなくなりすれば良かろう? どうせ、この会話も録音するなり、賢いアンタの事だ、なら何かしら手を打っているのだろう?」
「……」
「それに、仮にこの提案をアンタが断っても、儂の人生が終わる訳ではない。だが、アンタの方は、お嬢さんも含めて……どうなることだろうね?」

 確かに灰原の力をもってすれば、例え法廷に引き摺り出したとしても、その権力と財力でなんとかしてしまう可能性があった。よしんば悪事を白日のもとに曝したとして悪事から手を引かせたとしても、どんな高額の保釈金も簡単に支払い、悠々と日々を過ごす可能性も大いにある。
 それに対して、巴と莉亜は遥かに高いリスクを背負わされ、窮地に立たされているのだった。

「どうするかね?」

――ギリッ

 自分の立たされた状況を再確認すると、巴は悔しさのあまり美唇を噛みしめる。

「す、少しだけ……考える時間を……下さい」

 痛いぐらい握りしめた拳を震わせながら今の巴には、血を吐く思いでその言葉を吐き出すのがやっとだった。


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