蠢く鎧1
『蠢く鎧 -堕とされる女騎士 -』
【1】
――ガイーン!!
私の強烈な一撃で対戦相手の剣が吹き飛び、離れた地面に突き刺さった。
「勝負あったな」
「……くッ!!」
喉元にピタリと剣先を突きつけると、目の前の男は悔しげに呻き、ギッと私を睨みつける。
「これからは騎士団長が不在だからと、不正を働かぬことだな」
私の言葉に、男の顔がみるみると恥辱と怒りで真っ赤に染まっていった。
そんな男の無様な姿を一瞥して、私は剣を鞘に収めると、身を翻して城の方へと戻っていく。
その背後では男の取り巻きたちが心配して駆け寄ると、男が彼らに怒鳴り散らして怒りを爆発させていた。
だが、その時にはもう私の関心は、その男になど向いていなかった。
私が副団長を務めるこの騎士団は、近衛騎士団などと聴こえが良いが、王都中央から一歩も出ず、主に式典などに出るだけのお飾り部隊である。貴族の次男坊などが泊を付けようと入隊する事も多く、その為に士気も低く、年々、部隊としても騎士としても質が下がる一方だった。
そんな近衛騎士団の立て直しを、前線で数々の戦功を立てていた隊長と私に命じられたのだが、聞けば、王のたっての願いらしく、我々には断ることなど出来るはずもなかった。
王都へと戻った私たちは、即座に隊長が騎士団長へ、私が副団長へと任命されると、すぐさま近衛騎士団の立て直しを図った。
まずは、騎士団内にはこびっていた不正、腐敗を取り除き、厳しい規則でそれを取り締まる。破った者には私の主導で厳しい処罰を与え、次々と粛清していった。
その成果もあり、半年もすると近衛騎士団は見違えるような練度と士気を取り戻していった。
だが、その影では私たちに反感を持つ者も少なくなく、先の大貴族の御曹司も何かにつけては私に突っかかってきていた。
「女のくせに……」
影で男たちがそう呟くのを何度も耳にするが、そんな言葉など気にせず、私は力ずくで彼らを従わせていった。
親友でもある騎士団長は、そんな強引な私の行動をいつも嗜めるのだが、私は自分の行為が正しいと信じて疑わなかった。
―― 自分より力のある者には尻尾を振りへつらう ――
それが彼ら貴族の習性なのを、私はよく知っていたからだった。
だが、それが女だった場合に彼らが感じるのは屈辱でしかない……その事に、その時の私は気付く事が出来なかった。
騎士団長が王の遠征に随行して不在の間、残っている団員たちの鍛え直しが今の私の仕事だった。
特に残っている団員には先日の男のような貴族の御曹司ばかりが多く、従わせるために少々荒ぽい手法も必要であり、今日もそんな彼らの性根を叩き直す為に、私自ら彼らの相手をする模擬戦を行う予定だった。
私は訓練に向かう為に、薄着のインナースーツに着替えると、その上に愛用の鎧を身に付けていく。
「……ん?」
いつもと変わらぬ鎧のはずだが、僅かな違和感を感じた。だが、装備の装着具合を調べてみても、とくに問題は見当たらなかった。
「気のせい……か?」
――トン、トンッ
「既に全員揃い、副団長をお待ちしておりますッ」
「わ、わかった。すぐに行くッ!!」
慌てて防具を締め直した私は、出迎えにきた団員に促されるようにして、慌てて室内訓練場へと向かう。
そこには私に不満を持つ御曹司の一派が整列して私を待っており、その筆頭である先日負かしたあの男が、私に向かって敵意むき出しの視線を向けてきていた。
「今日こそ、その綺麗なツラを泣き面にしてやるよ」
「ふッ……今日はまた、えらく勇ましいな」
普段通りな男の啖呵に、私は冷笑で返す。
だが、普段なら男は、そこで私の反応に怒り狂うのだが、今日はその口元に乾いた笑みを浮かべていた。
周囲を見渡すと、彼の取り巻き連中も同様な笑みを浮かべており、その反応に私は違和感を感じ始める。
「また、なにか卑怯な手でも考えてるのだろうが……そう簡単には、いかないからなッ!!」
「へッ、よくわかってるじゃねぇかよ。だけど、もう遅いぜッ」
男が何か呪文のような言葉を発すると、突然私の鎧が蠢き始める。
硬質的な輝きを放っていた私の鎧が、蠢くと同時に有機的なヌメっとした質感へと変わり、胸当て部分に亀裂が入ったかと思うと、そこがパックリと裂け、ビッシリと細かい牙が並ぶまるで鮫の口腔を連想するような部位が現れた。
赤くヌメリとしたの有機的なその部分の中央が、突然、ギョロリと目が開かれて私と視線が合う。
「――ヒッ!? なッ……なんだ、これは……」
その変化は胸当てだけに留まらず、肩当て、手甲、脛当と私の全身を覆う防具がドンドンと同じように変化していった。
「アンタの鎧に、ちょいと寄生生物を仕込ませてもらったぜッ」
男の言葉の通り、先ほどまで無機質な鎧だったものが、有機的な生命へと変異し私の全身を覆っていた。
そうして変異した鎧の内側から、動物の腸のような禍々しいヌメリを帯びた細身の触手が次々と溢れ出たかと思うと、私の身体へと絡みついていく。
「――くッ!!」
慌てて引き剥がそうとする間にも次々と巻きつく触手は増え、私の身体をギチギチと締め付けていき、歪に変形させていく。
「こ、このぉっ……ぐッ、あぁぁぁ……」
そうして全身に絡みついた触手は、表面から分泌した粘液を滴らせながらズルズルと私の身体を這い回る。
そのヌルッとした感触と服に染み込んでくる粘液の生臭さに、私は生理的嫌悪感をもよおすのだが、服の合間からその触手が中へとどんどん入り込んでくると、それどころではなくなった。
「あッ、や、やめ……」
素肌をミミズに這い回られたかのようなヌメリとした気持ち悪い感触に、私はゾゾッと鳥肌を立てる。
嫌悪の悲鳴が溢れ出そうになるのをグッと堪え、鎧を脱ぎ捨てようとするのだが、触手を巻き付かせた鎧はガッチリと私の身体に張り付き一向に離れる気配がなかった。
そうしている間にも、襟元や脇の下、服の裾からと次々と無数の触手が入り込み、私の肌へと表面に分泌したドロッとした粘液を擦りつけていく。
「くぁぁッ……ハァ、ハァ……あンッ……えッ!?」
汚らしく気持ち悪い粘液をどんどんと全身に塗りつけられ、ヌメリを帯びた箇所が、次第に熱を帯び始めて敏感になっていっていくのに私は気がついた。それと共に知らず知らずのうちに呼吸が乱れ、手足が気だるくなって重くなっていく。
「な、なにを……私の身体に何をしたッ!!」
「なーに、ちょっと媚薬成分をそいつが分泌しているだけさ。女の淫液が大好物らしくてな、たっぷり分泌するように、そうして対象者を悶え焦らすらしいぜッ」
「――なッ!? 何を馬鹿な……こ、こんなモノ、切り刻んで……」
即座に抜き放った剣を振り下ろそうとした私の手を、密かに忍び寄っていた男の取り巻きの一人がガッシリと掴むと、すかざずもう片方の手も別の男が取り押さえた。
「おーっと、そうはいかさねぇよ」
「は、はなせッ! 貴様らッ!!」
「そう怒るなって、大枚叩いて手に入れたんだ、折角だからもっと楽しんでくれよ」
男たちは私から剣を取り上げると、両腕を強引に後ろ手に捻りあげ、手枷を手首にガッチリと嵌めてしまった。
「これを解け! 貴様ら何をやっているのかわかって……ウグッ!?」
「うるせぇから、しばらく黙っててくれよな」
私の口に棒状の口枷が無理やり噛まされ、両側についたベルトがギュッと後頭部で締め上げられる。
「ウッ、ウグッ!?……グゥゥッ!!」
罪人のように両手の自由を奪われたばかりか、言葉を発する事さえ封じられ、あまりの屈辱感に私の頭に血が上るのだが、私を押さえ込んでいた男達が離れると、それまで肌の表面をまさぐるかのように蠢いていただけだった触手が私の敏感な部分を狙い、責め立て始めると、それも吹き飛んだ。
ただでさえ触手で締め付けられ、粘液で強制的に感じやすくされているのに、更に敏感な部分に媚薬成分のある分泌液を塗りつけられて責め立てられてはたまらない。
触手がまるで無数の舌で舐めまわすかのように、私の素肌を這いずり、その刷毛のようなモノを生やかせた先端で、敏感な部分を刺激していく。
巻き付いた触手によって根元から絞り出すように締め付けられた乳房は砲弾型にパンパンに張り、ベットリと塗りつけられた粘液によって妖しく濡れ光ると共に、その最も敏感な乳首を太めの触手の先端が咥え込んだ。
「――ヒグッ!?」
乳房を網状に変化した触手が覆い被さり、まるで搾乳するかのように蠢き、先端が咥え込んだ乳首をシゴき立てられると、その身体を貫くような激しい刺激に私はガックリと膝をつき、恥も外聞もなく身体を打ち振らせて身悶えしはじめた。
「さーて、存分に恥をかいてもらおうか……副団長様よぉ」
「あッ、あぁぁぁ……」
男の言葉を遠くに聴きながら、今までに感じたこともない全身を貫き脳を焼き尽くさんばかりの悦楽に、私は次第に心を白く染め上げられていくのだった。
―― つづく ――
【1】
――ガイーン!!
私の強烈な一撃で対戦相手の剣が吹き飛び、離れた地面に突き刺さった。
「勝負あったな」
「……くッ!!」
喉元にピタリと剣先を突きつけると、目の前の男は悔しげに呻き、ギッと私を睨みつける。
「これからは騎士団長が不在だからと、不正を働かぬことだな」
私の言葉に、男の顔がみるみると恥辱と怒りで真っ赤に染まっていった。
そんな男の無様な姿を一瞥して、私は剣を鞘に収めると、身を翻して城の方へと戻っていく。
その背後では男の取り巻きたちが心配して駆け寄ると、男が彼らに怒鳴り散らして怒りを爆発させていた。
だが、その時にはもう私の関心は、その男になど向いていなかった。
私が副団長を務めるこの騎士団は、近衛騎士団などと聴こえが良いが、王都中央から一歩も出ず、主に式典などに出るだけのお飾り部隊である。貴族の次男坊などが泊を付けようと入隊する事も多く、その為に士気も低く、年々、部隊としても騎士としても質が下がる一方だった。
そんな近衛騎士団の立て直しを、前線で数々の戦功を立てていた隊長と私に命じられたのだが、聞けば、王のたっての願いらしく、我々には断ることなど出来るはずもなかった。
王都へと戻った私たちは、即座に隊長が騎士団長へ、私が副団長へと任命されると、すぐさま近衛騎士団の立て直しを図った。
まずは、騎士団内にはこびっていた不正、腐敗を取り除き、厳しい規則でそれを取り締まる。破った者には私の主導で厳しい処罰を与え、次々と粛清していった。
その成果もあり、半年もすると近衛騎士団は見違えるような練度と士気を取り戻していった。
だが、その影では私たちに反感を持つ者も少なくなく、先の大貴族の御曹司も何かにつけては私に突っかかってきていた。
「女のくせに……」
影で男たちがそう呟くのを何度も耳にするが、そんな言葉など気にせず、私は力ずくで彼らを従わせていった。
親友でもある騎士団長は、そんな強引な私の行動をいつも嗜めるのだが、私は自分の行為が正しいと信じて疑わなかった。
―― 自分より力のある者には尻尾を振りへつらう ――
それが彼ら貴族の習性なのを、私はよく知っていたからだった。
だが、それが女だった場合に彼らが感じるのは屈辱でしかない……その事に、その時の私は気付く事が出来なかった。
騎士団長が王の遠征に随行して不在の間、残っている団員たちの鍛え直しが今の私の仕事だった。
特に残っている団員には先日の男のような貴族の御曹司ばかりが多く、従わせるために少々荒ぽい手法も必要であり、今日もそんな彼らの性根を叩き直す為に、私自ら彼らの相手をする模擬戦を行う予定だった。
私は訓練に向かう為に、薄着のインナースーツに着替えると、その上に愛用の鎧を身に付けていく。
「……ん?」
いつもと変わらぬ鎧のはずだが、僅かな違和感を感じた。だが、装備の装着具合を調べてみても、とくに問題は見当たらなかった。
「気のせい……か?」
――トン、トンッ
「既に全員揃い、副団長をお待ちしておりますッ」
「わ、わかった。すぐに行くッ!!」
慌てて防具を締め直した私は、出迎えにきた団員に促されるようにして、慌てて室内訓練場へと向かう。
そこには私に不満を持つ御曹司の一派が整列して私を待っており、その筆頭である先日負かしたあの男が、私に向かって敵意むき出しの視線を向けてきていた。
「今日こそ、その綺麗なツラを泣き面にしてやるよ」
「ふッ……今日はまた、えらく勇ましいな」
普段通りな男の啖呵に、私は冷笑で返す。
だが、普段なら男は、そこで私の反応に怒り狂うのだが、今日はその口元に乾いた笑みを浮かべていた。
周囲を見渡すと、彼の取り巻き連中も同様な笑みを浮かべており、その反応に私は違和感を感じ始める。
「また、なにか卑怯な手でも考えてるのだろうが……そう簡単には、いかないからなッ!!」
「へッ、よくわかってるじゃねぇかよ。だけど、もう遅いぜッ」
男が何か呪文のような言葉を発すると、突然私の鎧が蠢き始める。
硬質的な輝きを放っていた私の鎧が、蠢くと同時に有機的なヌメっとした質感へと変わり、胸当て部分に亀裂が入ったかと思うと、そこがパックリと裂け、ビッシリと細かい牙が並ぶまるで鮫の口腔を連想するような部位が現れた。
赤くヌメリとしたの有機的なその部分の中央が、突然、ギョロリと目が開かれて私と視線が合う。
「――ヒッ!? なッ……なんだ、これは……」
その変化は胸当てだけに留まらず、肩当て、手甲、脛当と私の全身を覆う防具がドンドンと同じように変化していった。
「アンタの鎧に、ちょいと寄生生物を仕込ませてもらったぜッ」
男の言葉の通り、先ほどまで無機質な鎧だったものが、有機的な生命へと変異し私の全身を覆っていた。
そうして変異した鎧の内側から、動物の腸のような禍々しいヌメリを帯びた細身の触手が次々と溢れ出たかと思うと、私の身体へと絡みついていく。
「――くッ!!」
慌てて引き剥がそうとする間にも次々と巻きつく触手は増え、私の身体をギチギチと締め付けていき、歪に変形させていく。
「こ、このぉっ……ぐッ、あぁぁぁ……」
そうして全身に絡みついた触手は、表面から分泌した粘液を滴らせながらズルズルと私の身体を這い回る。
そのヌルッとした感触と服に染み込んでくる粘液の生臭さに、私は生理的嫌悪感をもよおすのだが、服の合間からその触手が中へとどんどん入り込んでくると、それどころではなくなった。
「あッ、や、やめ……」
素肌をミミズに這い回られたかのようなヌメリとした気持ち悪い感触に、私はゾゾッと鳥肌を立てる。
嫌悪の悲鳴が溢れ出そうになるのをグッと堪え、鎧を脱ぎ捨てようとするのだが、触手を巻き付かせた鎧はガッチリと私の身体に張り付き一向に離れる気配がなかった。
そうしている間にも、襟元や脇の下、服の裾からと次々と無数の触手が入り込み、私の肌へと表面に分泌したドロッとした粘液を擦りつけていく。
「くぁぁッ……ハァ、ハァ……あンッ……えッ!?」
汚らしく気持ち悪い粘液をどんどんと全身に塗りつけられ、ヌメリを帯びた箇所が、次第に熱を帯び始めて敏感になっていっていくのに私は気がついた。それと共に知らず知らずのうちに呼吸が乱れ、手足が気だるくなって重くなっていく。
「な、なにを……私の身体に何をしたッ!!」
「なーに、ちょっと媚薬成分をそいつが分泌しているだけさ。女の淫液が大好物らしくてな、たっぷり分泌するように、そうして対象者を悶え焦らすらしいぜッ」
「――なッ!? 何を馬鹿な……こ、こんなモノ、切り刻んで……」
即座に抜き放った剣を振り下ろそうとした私の手を、密かに忍び寄っていた男の取り巻きの一人がガッシリと掴むと、すかざずもう片方の手も別の男が取り押さえた。
「おーっと、そうはいかさねぇよ」
「は、はなせッ! 貴様らッ!!」
「そう怒るなって、大枚叩いて手に入れたんだ、折角だからもっと楽しんでくれよ」
男たちは私から剣を取り上げると、両腕を強引に後ろ手に捻りあげ、手枷を手首にガッチリと嵌めてしまった。
「これを解け! 貴様ら何をやっているのかわかって……ウグッ!?」
「うるせぇから、しばらく黙っててくれよな」
私の口に棒状の口枷が無理やり噛まされ、両側についたベルトがギュッと後頭部で締め上げられる。
「ウッ、ウグッ!?……グゥゥッ!!」
罪人のように両手の自由を奪われたばかりか、言葉を発する事さえ封じられ、あまりの屈辱感に私の頭に血が上るのだが、私を押さえ込んでいた男達が離れると、それまで肌の表面をまさぐるかのように蠢いていただけだった触手が私の敏感な部分を狙い、責め立て始めると、それも吹き飛んだ。
ただでさえ触手で締め付けられ、粘液で強制的に感じやすくされているのに、更に敏感な部分に媚薬成分のある分泌液を塗りつけられて責め立てられてはたまらない。
触手がまるで無数の舌で舐めまわすかのように、私の素肌を這いずり、その刷毛のようなモノを生やかせた先端で、敏感な部分を刺激していく。
巻き付いた触手によって根元から絞り出すように締め付けられた乳房は砲弾型にパンパンに張り、ベットリと塗りつけられた粘液によって妖しく濡れ光ると共に、その最も敏感な乳首を太めの触手の先端が咥え込んだ。
「――ヒグッ!?」
乳房を網状に変化した触手が覆い被さり、まるで搾乳するかのように蠢き、先端が咥え込んだ乳首をシゴき立てられると、その身体を貫くような激しい刺激に私はガックリと膝をつき、恥も外聞もなく身体を打ち振らせて身悶えしはじめた。
「さーて、存分に恥をかいてもらおうか……副団長様よぉ」
「あッ、あぁぁぁ……」
男の言葉を遠くに聴きながら、今までに感じたこともない全身を貫き脳を焼き尽くさんばかりの悦楽に、私は次第に心を白く染め上げられていくのだった。
―― つづく ――