辻風外伝・・・
PIXIV用に書いた『黒い辻風と調律師』の外伝的なエピソードです。
本編が完結してないので、こちらでの掲載はまだまだ先の予定でしたが、Blogまで読まれている方への特典ということで・・・(笑)。
少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
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『クロウリー邸のとある朝』
「……うッ……うん……」
顔に当たる日差しの暖かさに、辻風はゆっくりと目を覚ました。
――ギチ、ギチッ……
だが、寝返りを打とうと身じろぎをすると、革のしなる独特の音と共にガチッと手足の動きが制限された。
それによって窮屈に折り畳まれた四肢の感覚が呼び覚まされ、徐々に自分の状況を思い出していく。
(あぁ……そうだった……)
ゆっくりと瞼を開けると、目の前に真っ黒な鉄の柵が目に入り、自分が大型犬用の檻の中に入っているのを認識すると、すぐに自らの身体の状態を確認していく。
―― 素肌にピッチリと貼り付いた漆黒のラバースーツが無駄なく引き締められた全身をギュッと締めつけ、その上から装着されたコルセットやハーネスを組み合わせた拘束具が、女であることを強調するかのように歪に身体を変形させていた ――
―― 手足にはそれぞれ幅広の革ベルトが巻き付けられ、無理やり折り畳んだ状態でガッチリと固定すると共に、移動の際には肉厚の衝撃吸収材肘の取り付けられた肘と膝を使って獣のように四つん這いになる事を強制する ――
―― その獣の気持ちを後押しするかのように、首に肉厚の首輪がピッチリと嵌められ、そこから下げられた鈴が、動くたびに澄んだ音を響かせた ――
―― 顔には鼻と口を覆うガスマスクをつけられ呼吸制限をされると共に、頭にはネコ耳のついたカチューシャを装着され、柵の前に設置された鏡に映る姿は、まるで黒猫か黒豹のようである ――
―― それをより強調するかのように、アナルに押し込まれた淫具から垂れ下がる細くて長い尻尾が、突き出したヒップの影でユラユラと揺れていた ――
(今回も……凄い格好にされたものだ……)
これらを装着していく時の嬉々としたメイド姿の少女を思い出し、辻風はマスクの下で乾いた笑みを浮べた。
(だけど……瑠璃には、どうしてだか強く抗えない……)
妙にお姉さんぶる小柄な少女に、いつも翻弄されてはヒドイ目に合わされているのだが、それでもどこか憎めない彼女とのやり取りを、いつしか楽しんでいる自分がいた。
(こんな風に、人に心を許したことはなかったのに……)
あまつさえ、こんな自由を奪われた屈辱的な仕打ちを受けても、それを甘受してしまっている。そんな暗殺者の時には考えられなかった自らの変化に戸惑いを覚えているのだが、それになぜか安らぎを感じてもいた。
その事はこの屋敷の主に対しても同じで、いつも笑みを絶やさず優しく囁きかける男の姿を見るだけで、なぜか心臓の鼓動が早まっていく。
その自分の反応に困惑し、当初はクスリでも盛られたかと勘ぐりもしたが、今ではそうでないと理解していた。
だが、それがどんな感情から来るものなのかは、人と接するのに感情を殺して生きてきた辻風には本当の意味では理解できていなかった。
――ガチャッ……
辻風のいる部屋の扉が静かに開かれると、その隙間からひょっこりと小さな頭が顔を出した。
覗きこんだのは、凄く綺麗で長い金髪をポニーテールにまとめ、まるで西洋人形のような整った顔立ちをしている少女で、檻の中の辻風が目を覚ましているのを確認するとニッコリと微笑んだ。
それは、まるで向日葵のような明るく、見ている者も元気にするような屈託のない笑顔で、思わず辻風の口元も綻びそうになるのだが、ハッとしてそれを悟られぬようプイッと顔を背けた。
「……クスッ」
そんな辻風の態度に少女は意地の悪い笑みを浮べると、スタスタと部屋の中へと入ってくるのだが、その身に着けている衣装は、奇妙なものであった。
デザインは黒を基調として白いフリルをつけたメイド服であるのだが、それらは全てラバー素材で作られていて、その服から出ているスラリとした四肢も黒い光沢のあるラバーでしっかりと包まれおり、足元は普通なら立っているのも辛いような高いピンヒールである。
キュッとしまった手首と足首にはガッシリとした枷が嵌められめられていて、細い首にも肉厚の首輪がシッカリと巻きつけられているのだった。
「辻風、お腹が空いたでしょう? 今、ご飯にしてあげるからねッ」
少女はにこやかな笑みを浮べながら懐から出した鍵で檻の錠を外し扉を開くと、顔を背けたままの辻風の首輪に鎖を取り付けてグイッと引っ張った。
「――ぐえッ! ……ごほッ、げほッ!!」
「あぁ、ごめんねぇッ! 瑠璃ったら、また力加減を失敗しちゃったッ」
急に首輪を引かれて喉元を締め付けられた辻風が激しく咽ると、瑠璃と名乗る少女はペロッと舌を出して謝るのだが、すぐさま再び笑顔を浮べると陽気に鼻歌を奏でながら鎖を持ってスタスタと歩き始めた。
華奢で小柄な身体に反して、女性にしては長身の辻風を苦もなくズルズルと引き摺り始める。
それに慌てた辻風は、折り畳まれた四肢を必死に動かしてついて行こうとするのだが、短く折り畳まれた状態の手足ではなかなか進まず、結局、瑠璃に半分引き摺られる形で歩かされる事となるのだった。
辻風が瑠璃に連れて行かれたのは屋外で、心地よい日差しの中、綺麗に手入れのいき届いた広大な芝生の上にはテーブルと椅子が用意されていた。
染み一つ無い白いテーブルクロスの上では、美味しそうな朝食が並んでおり、中央に置かれたバスケットには焼きたての様々なパンが並び、湯気をあげる透き通るような琥珀色のコンソメスープや、表面をサッと炙った肉厚のベーコンなどが、美味しそうな香りを周囲に漂わせていた。
その食欲をそそる香りを嗅いだ途端、辻風のお腹がグゥッと大きな音を立てて鳴ると、テーブルの向こうに座っていた屋敷の主がクスクスと笑った。
座っているのは細身の青年で、黒いタートルネックにジーンズとラフな服装に身を包み、眼鏡のレンズの向こうで目を細め笑顔を浮べている。
それを姿を見た途端に辻風の顔が真っ赤になり、彼女が慌ててそれを隠すように俯くと、青年の笑みは益々深まった。
「もぅ、笑ったらダメですよッ! クロ様」
「あぁ、ごめん、ごめん。つい辻風が可愛くってね」
クロと呼ばれた青年は、メイドの少女に窘められると素直に辻風に向かって謝った。
それに対して、辻風は益々顔を赤らめ、首元までまるで茹でタコのように真っ赤にすると、俯いたまま顔を上げれなくなっていた。
そんな辻風の目の前に瑠璃は跪くと、慣れた手付きでマスクを外して、そっと芝生の上に料理を盛り付けたお皿を置く。
「レディを笑うなんて、クロ様たらヒドイよねッ!!」
プンプンと怒ってみせる瑠璃であったが、その顔は笑っており、それに対するクロも困ったような笑みを浮かべて肩を竦ませて見せる。
そんな2人を前髪の合間からチラリと覗き見て、辻風も知らず知らずのうちに口元を綻ばせていた。
だが、そんな2人の笑顔が突然、ピタリと止み、クロがヒクヒクと鼻をひくつかせて溜息を付いたかと思うと、瑠璃が黙ってスクッと立ち上がった。
そんな2人に僅かに遅れて、辻風も静かに近づいてくる不穏な気配を感じ取った。
「ふーッ、こんな朝っぱらから……少しは時間を考えて欲しいものだね」
苦笑いを浮べるクロの目の前では、瑠璃がテーブルの下からゴソゴソと愛用の大型のチェーンソーを取り出して軽々と片手で掴みあげる。
「それじゃ、ちょっとお客様をお出迎えしてきますねッ」
「うん、出来れば手早くお願いしますよ。折角、瑠璃が作った朝食が冷めたら勿体無い」
「はーいッ」
クロに元気に返事をすると瑠璃は駆け出していく。
その姿を見送ったクロは、足元がグイッと引かれたことに気が付いた。
見下ろすと辻風がズボンを咥えてジッとクロの事を見上げている。
「辻風も行ってくれるのですか?」
クロの問いかけに辻風は黙って頷くと、その瞳がスッと細められ、口元には不敵な笑みが浮かんでいた。
「うちの女性たちは、勇ましくって……ホント、頼りになりますね」
クロは再び、苦笑いを浮かべると、スッと上げた右手の指を打ち鳴らす。
――パチッ!!
すると、まるで手品のように辻風を戒めていた拘束具のロックが外れ、バラリと芝生の上へと落ちていった。
「……タダ飯食らいとは、言われたくないからな」
スクッと立ち上がった辻風はクロと視線を合わせずにぶっきら棒に言い放つと、全身に冷たい暗殺者の気配を纏わせて、その場から姿を消した。
それを黙って見送ったクロは、まだ湯気を立ち上らせている紅茶の入ったマイセンのカップに手を伸ばす。
優雅な動作でカップを口元に寄せて華やかな香りを楽しむクロであったが、ふと思い出したかのように辻風たちが向かった方へと顔を向けた。
「辻風……尻尾とネコ耳が付いたままですよ」
ボソッとひとり呟き、口元を綻ばせると、クロは手にしたカップへと口をつけて、鼻腔を抜ける紅茶の香りを楽しみながらその味を堪能するのだった。
―― END ――
本編が完結してないので、こちらでの掲載はまだまだ先の予定でしたが、Blogまで読まれている方への特典ということで・・・(笑)。
少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
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『クロウリー邸のとある朝』
「……うッ……うん……」
顔に当たる日差しの暖かさに、辻風はゆっくりと目を覚ました。
――ギチ、ギチッ……
だが、寝返りを打とうと身じろぎをすると、革のしなる独特の音と共にガチッと手足の動きが制限された。
それによって窮屈に折り畳まれた四肢の感覚が呼び覚まされ、徐々に自分の状況を思い出していく。
(あぁ……そうだった……)
ゆっくりと瞼を開けると、目の前に真っ黒な鉄の柵が目に入り、自分が大型犬用の檻の中に入っているのを認識すると、すぐに自らの身体の状態を確認していく。
―― 素肌にピッチリと貼り付いた漆黒のラバースーツが無駄なく引き締められた全身をギュッと締めつけ、その上から装着されたコルセットやハーネスを組み合わせた拘束具が、女であることを強調するかのように歪に身体を変形させていた ――
―― 手足にはそれぞれ幅広の革ベルトが巻き付けられ、無理やり折り畳んだ状態でガッチリと固定すると共に、移動の際には肉厚の衝撃吸収材肘の取り付けられた肘と膝を使って獣のように四つん這いになる事を強制する ――
―― その獣の気持ちを後押しするかのように、首に肉厚の首輪がピッチリと嵌められ、そこから下げられた鈴が、動くたびに澄んだ音を響かせた ――
―― 顔には鼻と口を覆うガスマスクをつけられ呼吸制限をされると共に、頭にはネコ耳のついたカチューシャを装着され、柵の前に設置された鏡に映る姿は、まるで黒猫か黒豹のようである ――
―― それをより強調するかのように、アナルに押し込まれた淫具から垂れ下がる細くて長い尻尾が、突き出したヒップの影でユラユラと揺れていた ――
(今回も……凄い格好にされたものだ……)
これらを装着していく時の嬉々としたメイド姿の少女を思い出し、辻風はマスクの下で乾いた笑みを浮べた。
(だけど……瑠璃には、どうしてだか強く抗えない……)
妙にお姉さんぶる小柄な少女に、いつも翻弄されてはヒドイ目に合わされているのだが、それでもどこか憎めない彼女とのやり取りを、いつしか楽しんでいる自分がいた。
(こんな風に、人に心を許したことはなかったのに……)
あまつさえ、こんな自由を奪われた屈辱的な仕打ちを受けても、それを甘受してしまっている。そんな暗殺者の時には考えられなかった自らの変化に戸惑いを覚えているのだが、それになぜか安らぎを感じてもいた。
その事はこの屋敷の主に対しても同じで、いつも笑みを絶やさず優しく囁きかける男の姿を見るだけで、なぜか心臓の鼓動が早まっていく。
その自分の反応に困惑し、当初はクスリでも盛られたかと勘ぐりもしたが、今ではそうでないと理解していた。
だが、それがどんな感情から来るものなのかは、人と接するのに感情を殺して生きてきた辻風には本当の意味では理解できていなかった。
――ガチャッ……
辻風のいる部屋の扉が静かに開かれると、その隙間からひょっこりと小さな頭が顔を出した。
覗きこんだのは、凄く綺麗で長い金髪をポニーテールにまとめ、まるで西洋人形のような整った顔立ちをしている少女で、檻の中の辻風が目を覚ましているのを確認するとニッコリと微笑んだ。
それは、まるで向日葵のような明るく、見ている者も元気にするような屈託のない笑顔で、思わず辻風の口元も綻びそうになるのだが、ハッとしてそれを悟られぬようプイッと顔を背けた。
「……クスッ」
そんな辻風の態度に少女は意地の悪い笑みを浮べると、スタスタと部屋の中へと入ってくるのだが、その身に着けている衣装は、奇妙なものであった。
デザインは黒を基調として白いフリルをつけたメイド服であるのだが、それらは全てラバー素材で作られていて、その服から出ているスラリとした四肢も黒い光沢のあるラバーでしっかりと包まれおり、足元は普通なら立っているのも辛いような高いピンヒールである。
キュッとしまった手首と足首にはガッシリとした枷が嵌められめられていて、細い首にも肉厚の首輪がシッカリと巻きつけられているのだった。
「辻風、お腹が空いたでしょう? 今、ご飯にしてあげるからねッ」
少女はにこやかな笑みを浮べながら懐から出した鍵で檻の錠を外し扉を開くと、顔を背けたままの辻風の首輪に鎖を取り付けてグイッと引っ張った。
「――ぐえッ! ……ごほッ、げほッ!!」
「あぁ、ごめんねぇッ! 瑠璃ったら、また力加減を失敗しちゃったッ」
急に首輪を引かれて喉元を締め付けられた辻風が激しく咽ると、瑠璃と名乗る少女はペロッと舌を出して謝るのだが、すぐさま再び笑顔を浮べると陽気に鼻歌を奏でながら鎖を持ってスタスタと歩き始めた。
華奢で小柄な身体に反して、女性にしては長身の辻風を苦もなくズルズルと引き摺り始める。
それに慌てた辻風は、折り畳まれた四肢を必死に動かしてついて行こうとするのだが、短く折り畳まれた状態の手足ではなかなか進まず、結局、瑠璃に半分引き摺られる形で歩かされる事となるのだった。
辻風が瑠璃に連れて行かれたのは屋外で、心地よい日差しの中、綺麗に手入れのいき届いた広大な芝生の上にはテーブルと椅子が用意されていた。
染み一つ無い白いテーブルクロスの上では、美味しそうな朝食が並んでおり、中央に置かれたバスケットには焼きたての様々なパンが並び、湯気をあげる透き通るような琥珀色のコンソメスープや、表面をサッと炙った肉厚のベーコンなどが、美味しそうな香りを周囲に漂わせていた。
その食欲をそそる香りを嗅いだ途端、辻風のお腹がグゥッと大きな音を立てて鳴ると、テーブルの向こうに座っていた屋敷の主がクスクスと笑った。
座っているのは細身の青年で、黒いタートルネックにジーンズとラフな服装に身を包み、眼鏡のレンズの向こうで目を細め笑顔を浮べている。
それを姿を見た途端に辻風の顔が真っ赤になり、彼女が慌ててそれを隠すように俯くと、青年の笑みは益々深まった。
「もぅ、笑ったらダメですよッ! クロ様」
「あぁ、ごめん、ごめん。つい辻風が可愛くってね」
クロと呼ばれた青年は、メイドの少女に窘められると素直に辻風に向かって謝った。
それに対して、辻風は益々顔を赤らめ、首元までまるで茹でタコのように真っ赤にすると、俯いたまま顔を上げれなくなっていた。
そんな辻風の目の前に瑠璃は跪くと、慣れた手付きでマスクを外して、そっと芝生の上に料理を盛り付けたお皿を置く。
「レディを笑うなんて、クロ様たらヒドイよねッ!!」
プンプンと怒ってみせる瑠璃であったが、その顔は笑っており、それに対するクロも困ったような笑みを浮かべて肩を竦ませて見せる。
そんな2人を前髪の合間からチラリと覗き見て、辻風も知らず知らずのうちに口元を綻ばせていた。
だが、そんな2人の笑顔が突然、ピタリと止み、クロがヒクヒクと鼻をひくつかせて溜息を付いたかと思うと、瑠璃が黙ってスクッと立ち上がった。
そんな2人に僅かに遅れて、辻風も静かに近づいてくる不穏な気配を感じ取った。
「ふーッ、こんな朝っぱらから……少しは時間を考えて欲しいものだね」
苦笑いを浮べるクロの目の前では、瑠璃がテーブルの下からゴソゴソと愛用の大型のチェーンソーを取り出して軽々と片手で掴みあげる。
「それじゃ、ちょっとお客様をお出迎えしてきますねッ」
「うん、出来れば手早くお願いしますよ。折角、瑠璃が作った朝食が冷めたら勿体無い」
「はーいッ」
クロに元気に返事をすると瑠璃は駆け出していく。
その姿を見送ったクロは、足元がグイッと引かれたことに気が付いた。
見下ろすと辻風がズボンを咥えてジッとクロの事を見上げている。
「辻風も行ってくれるのですか?」
クロの問いかけに辻風は黙って頷くと、その瞳がスッと細められ、口元には不敵な笑みが浮かんでいた。
「うちの女性たちは、勇ましくって……ホント、頼りになりますね」
クロは再び、苦笑いを浮かべると、スッと上げた右手の指を打ち鳴らす。
――パチッ!!
すると、まるで手品のように辻風を戒めていた拘束具のロックが外れ、バラリと芝生の上へと落ちていった。
「……タダ飯食らいとは、言われたくないからな」
スクッと立ち上がった辻風はクロと視線を合わせずにぶっきら棒に言い放つと、全身に冷たい暗殺者の気配を纏わせて、その場から姿を消した。
それを黙って見送ったクロは、まだ湯気を立ち上らせている紅茶の入ったマイセンのカップに手を伸ばす。
優雅な動作でカップを口元に寄せて華やかな香りを楽しむクロであったが、ふと思い出したかのように辻風たちが向かった方へと顔を向けた。
「辻風……尻尾とネコ耳が付いたままですよ」
ボソッとひとり呟き、口元を綻ばせると、クロは手にしたカップへと口をつけて、鼻腔を抜ける紅茶の香りを楽しみながらその味を堪能するのだった。
―― END ――